001 杉木源三氏|スペースデザイナー

仕事と作品の境界

大衡

仕事の成果物に対しての「作品」という言い方ですが、僕の場合はグラフィックデザインなので、完全に商業デザインです。グラフィックアーティストというカテゴリもありますけど。

カメラマンでもアーティスティックなカメラマンもいれば、商業的なカメラマンもいますが、自分でやった仕事、例えばお金をもらってデザインした仕事を「私の作品」と言うことに、ものすごい抵抗があります。

まぁ、量産されて販売されているような椅子でも『作品』だったりするんですが、その辺の作品と仕事の境目については微妙だったりしますが、その辺は気になりませんか?

杉木

うーん。まあ、もう気にしてない。自分の仕事を「作品と呼ばないでください」とか「僕は先生じゃないです」とか、そう呼ばれる度に一々言ってたことがあるけど、 心からそう言いたい人もいれば「先生って言うといたら間違いないやろ」っていう人も居るし、もうそのままで付き合って行こうかと。

大衡

そうですね。ここ数年で、僕の周りの人がみんな「杉木先生」って言うのが定着しましたね。

杉木

もう、ええわと思って。

大衡

でも中塚さん(aRC FURNITUREPOINT代表)のことを先生っていう人は、あまり居ない。中塚さんは先生というより、やっぱり社長ですよね。

杉木

社長やろうな。
あの人は人に作らしても、多分自分では作らない。でも「あの人にこんなん作らせたら面白いやろな」っていうのが発想できる人。

大衡

そうですね。 また中塚さんにもこういうの(対談)をお願いしようと思ってるんですけど、独特ですよね。デザイナーではないけど、デザインのことをよく分かってはる気がします。

そして和空の人たちの凄いところは、 建築家とかインテリアデザイナーとかアーティストとか、肩書きはそれぞれ違うんですけど、本質の部分で考え方が近いというか、集まればすぐにシンクロする感じ。

杉木

中塚さんも、堀木さんも、辻やんも、谷口さんも、まぁ、僕もなんやけど、 みんなそのアカデミックな世界をくぐってきてないという。

銀行員やってたとか、株の営業マンやってたとか。それがある時、クリエイティブな事に触れて、感動して、そしてやろうっていうので今まで来てるから、その辺の共通言語があるんやと思う。

大衡

ただ、みんな物事の本質を掴むのがものすごく速いって言うか、上手いと思うんですよ。 「コレって、こういうことやろ」っていうのが。 辻村さんなんか、そういうのがめっちゃ早いと思うんですけど、だからこっちとしてはやりにくい時もあるんですけどね(笑

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